不安の正体

高い所が怖かった。

 

幼稚園でクラス全員がジャングルジムに上って撮った写真がある。

ひとりだけ皆と同じ高さまで上れず一段低いところで写っている。

何十年もたった今でも覚えているその時の気持ち。

 

高い所が怖かった。

 

今は高層ビルから見る夜景を美しいと感じ、

吊り橋も渡ることができる。

 

人間は高い所への恐怖感を本能的に備えていると思う。

高い所から落ちた経験があったり、

落ちたらどうなるかということを想像することができる。

 

鳥のような翼もなく、ボイスレコーダーのような頑強な作りの肉体でもない。

高層ビルや吊り橋から落ちたらどうなるかを想像するのは容易い。

「死」から身を守らなければ子孫を繁栄させることもできないのだ。

 

幼い頃は周囲に「死」というものに触れる機会もなく

万全と「死」への恐怖だけが大きく膨らんでいた。

 

大きくなるにつれ、生き物が死ぬのを見たり、葬式に参列したり、

病院へ見舞いに行ったりして「死」が誰にでも訪れるものだという理解が

深まると同時に「高い所」への恐怖も薄れていった。

 

私達の日常は死ばかりではなく、さまざまな不安や恐怖に満ちあふれている。

ただ恐れているばかりでは美しいものに感動する心や

楽しいことに触れる機会を逸してしまう。

 

その不安や恐怖の正体をつきとめてみよう。

 

きっと人生がひときわ輝いてみえてくるはずだ。